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【高齢者の塩分摂取量を調整】減塩しても美味しく食べられる介護食

食事をとる高齢者


「高齢者の方が健康的な生活を送るためには、日々の食生活における減塩対策が重要と言われています。しかし、「どうすれば塩分を減らすことができるのか?」、「減塩食は美味しくないのではないか?」といった疑問を抱いている方も多いでしょうか。

本記事では、そんな皆さんのために、介護食と減塩の関係、そして美味しい減塩食の作り方について詳しく解説します。

日常生活でも、「減塩」が注目される傾向にあります。スーパーで「減塩しょうゆ」や「減塩みそ」などの、塩分に配慮した調味料や食品を目にする機会も増えてきました。

実は日本では、高齢者の3人に2人が高血圧と診断されており、これは欧米の先進国と比べても高い割合です。

高血圧は脳卒中や心臓病につながりやすく、その予防と治療は今や国民的な課題になっています。

高齢者の1日の塩分摂取量の目安


塩

塩分の摂取は、さまざまな疾患に大きな関係がありますが、特に高血圧や腎臓病には注意が必要です。

塩分を摂りすぎてしまうと、血液中の塩分濃度を下げるために血管内の水分が増加し、その後血量が多くなります。この状態を高血圧と言います。

高血圧は、血管に負担がかかり心筋梗塞や動脈硬化を引き起こす可能性があります。

また、血液量が増加すると腎臓への負担も大きくなります。腎機能の低下は放置しておくと、腎不全へと移行する可能性があり、透析が必要になるケースもあります。

加齢による身体機能の衰えもある高齢者は、リスクが大きいため注意が必要です。

このような疾患を引き起こさないためにも、日頃の食事から塩分の摂取量について理解しておくことが重要です。

では、1日に何gまで塩分を摂取しても良いのか、厚生労働省が定めている日本人の食事摂取基準(2020年版)では下記のとおりです。

目標量
成人男性 : 7.5g / 日 未満
成人女性 : 6.5g / 日 未満


高齢者の塩分推奨量は、日本高血圧学会によると6.0g/日未満です。

ところが、実際には、日本人が1日に摂取する平均塩分量は厚生労働省平成30年「国民健康栄養調査」によると男性が10.9g、女性が9.3gという数値が報告されており、厚生労働省が推奨する1日の塩分量の目安を遥かに超えています。

よって、私たちは日々の食事における塩分摂取量を減らさなくてはいけないことが分かります。

減塩食を作る際のポイント

塩分摂取が過多になると、さまざまな健康リスクが増大します。そのため、日常の食事においては塩分を減らすことが肝要です。

しかしながら、日本食でよく使用される醤油や味噌などの調味料は塩分を多く含む傾向にあります。

その一方で、塩分を減らすと「味が薄くなる」と感じることがあり、特に食欲が落ちている高齢者は食事への興味を失ってしまうことも考えられます。

また、年齢も塩分摂取量に影響を及ぼします。年を重ねると薄味を好むようになると一般的に思われがちですが、実際には逆の傾向があります。

高齢者は味蕾という味を感じる器官が感度を失うため、若い人よりも濃い味付けを好むようになります。その結果、知らず知らずのうちに食事の味付けが濃くなりがちです。

こうした状況で減塩を目指し、急激に調味料の使用量を減らすと、食事が味気ないと感じてしまいます。

そこで、ここでは味気なさを感じさせずに美味しい食事を提供できる、減塩食作りのポイントを6つ紹介します。

① ダシを活用する
旨味成分を多く含む食材、例えば昆布、かつお節、(干し)椎茸、煮干しから出るダシを使うことで、塩分を控えめにしても味わい深い食事を提供することができます。

② 旬の食材を用いる
旬の食材はその旨味や風味が強いため、塩分の少なさを補う効果があります。旬の食材の多くは味も良く魚は脂肪分が豊富であったり、栄養価も高いのでおすすめです。

③ スパイスや香味野菜を活用する
こしょう、カレー粉、わさび、唐辛子、生姜、ミョウガなど、風味を高めるスパイスや香味野菜を使用することで、食事の香りを楽しむことができます。

これにより、味が薄くても食事に満足感を感じられます。また、これらの食材は食欲を増進する効果もあり、特に高齢者にとって有益です。

④ 香りとコクを出す
ごま油や植物油を使用することで、料理に香りとコクを加えることが可能です。これにより、薄味でも食事が美味しく感じられます。
さらに、ごま油や植物油はコレステロール上昇を抑制する効果もあるとされています。

⑤ 減塩の調味料を使用する
塩分が通常よりカットされている減塩の商品を活用するのも効果的です。
スーパーなどで簡単に手に入るので、調味料を全て減塩のものに変えてしまうのも良いと思います。

⑥ 酸味を活かす
柑橘類(レモン、すだちなど)やお酢を使用することでアクセントになり、さっぱりするので食欲増進につながります。


減塩は、我々の健康を維持し、様々な疾病を予防するために不可欠な要素であります。

しかしながら、塩分を過度に削減しすぎると、倦怠感、頭痛、吐き気、食欲不振、筋肉の痙攣、意識障害など、身体的な不調を引き起こす可能性もあるのです。

そのため、減塩を行う際には、少しずつ自身にとって可能な範囲から始めてみることをおすすめします。

減塩しても美味しく食べられるソースと副菜

食事をする際、調味料やソースが無意識のうちに過剰な塩分摂取の原因となることが頻繁にあります。

私たちが日常的に使用する調味料やソースの中で、小さじ1杯あたりの食塩含有量は以下の通りです。

小さじ1杯に含まれる食塩量
食塩:6g
和風だしの素:1.3g
コンソメ:1.7g
薄口醤油:1.0g
濃口醤油:0.9g
みそ:約0.4~0.7g
ウスターソース:0.5g
中濃ソース:0.3g


高齢者の1日あたりの食塩摂取量の目安は6gです。
塩分を考慮せずに3食食事を摂ると、あっという間にこの目安を超えてしまう可能性があります。

ここで、減塩を意識しながらも美味しく楽しむことができるソースと副菜の推奨レシピをご紹介します。

おすすめレシピ:ソース編


【レモンクリームソース】

レモンクリームソース

エネルギー132kcal たんぱく質0.4g 食塩相当量 0.08g(ソースのみの栄養成分)

★ レシピの特徴

今回ご紹介するソースは、爽快なレモンの果汁と滑らかな生クリームを使用しています。家庭でよく作られる鮭の塩焼きを、一工夫加えてエレガントなフレンチへと昇華させます。

今回はこのソースを鮭の塩焼きに添えました。鮭の風味を際立たせつつ、さっぱりとした味わいとクリーミーな食感を楽しむことができます。



レモンクリームソース材料
〈1人分材料〉
★そふまる 鮭の塩焼き.....1個
生クリーム(動物性).....25g
バター.....3g
レモン果汁.....1g
オリーブオイル.....1g
ブラックペッパー.....少々



さけの塩焼き

さけの塩焼き


UDF区分:「歯ぐきでつぶせる」

鮭本来の味もお楽しみいただけるように、味付けは塩でシンプルに。
皮まで箸でスッと切れるやわらかさに仕上げていますので安心してお召し上がりいただけます。

さけの塩焼きの詳細はこちら



〈作り方〉
① 鍋にバターを入れ、火にかける。

② バターが溶けてきたら生クリームを入れ、ヘラで混ぜながら煮詰める。

レモンクリームソースの作り方2

③ 煮詰まったら火を止め、レモン果汁を加えてよく混ぜる。

④ 鮭の塩焼きを盛り付け、ソースをかける

⑤ 最後に上からオリーブオイルとブラックペッパーを振りかける。

☆美味しく作るポイント
植物性の生クリームはレモン果汁を加えると分離しやすいため、動物性の生クリームがおすすめです。


【キウイソース】

キウイソース

エネルギー 138kcal たんぱく質 0.3g 食塩相当量 0g(ソースのみの栄養成分)

★ レシピの特徴

お肉料理にぴったりのキウイソースをご紹介します。キウイの自然な酸味があるため、暑い季節でもさっぱりとした口当たりでお楽しみいただけます。

今回、試しに「そふまる」の鶏の唐揚げ甘辛あんにこのソースを添えてみました。ソースの甘さとお肉の塩味が見事に調和し、とても美味しくいただけます。

また、カリウムを豊富に含むキウイを使用しているため、ナトリウムを尿と一緒に体外に排出する助けとなります。



キウイソース材料

〈1人分材料〉
★そふまる 鶏の唐揚げ甘辛あん.....1個
キウイ.....40g(1/2個)
砂糖.....30g
レモン果汁.....0.5g



鶏の唐揚げ甘辛あん

鶏の唐揚げ甘辛あん


UDF区分:「歯ぐきでつぶせる」

みんな大好き、人気の唐揚げに自慢の甘辛あんをたっぷりからめました!!

鶏の唐揚げ甘辛あんの詳細はこちら



〈作り方〉
① キウイをよく洗い、皮をむき、細かく切ります。

キウイの作り方1

② 切ったキウイと砂糖を鍋に入れ、軽くかき混ぜて中火で加熱します。
(アクが出てきたら取ります)

レモンクリームソースの作り方2

③ キウイの色が変わりとろみがついてきたら火を止め、レモン果汁を加えてかき混ぜ、全体が混ざれば完成です。

レモンクリームソースの作り方2

☆美味しく作るポイント
しっかりととろみがつくように加熱することで、舌触りも良く飲み込みやすい仕上がりになります。

おすすめレシピ:副菜編


【豆腐とオクラのもずく和え】

豆腐とオクラのもずく和え

エネルギー98kcal たんぱく質4.8g 食塩相当量0.18g

★ レシピの特徴

見た目も爽やかで、お酢と生姜のさっぱりとした味付けが特徴の一品です。暑い夏にぴったりな料理といえます。もずくとオクラのとろりとした食感が食欲をそそります。

さらに、キウイと同様に胡麻もカリウムを豊富に含んでいます。これにより、ナトリウムが尿とともに体外に排出され、血圧を下げる効果が期待できます。


豆腐とオクラのもずく和え材料

〈1人分材料〉
豆腐.....1/4丁(80g)
刻みオクラ.....20g
もずく.....25g
●酢.....18g
●上白糖.....6g
●生姜.....2g
●塩.....0.2g
すりごま.....1g


〈作り方〉
① ●の材料を混ぜ合わせる。

② 冷凍刻みオクラはふんわりとラップをかけて電子レンジで500w30秒加熱する。
※生のオクラの場合は、少し塩をまぶしてもみ込み、ガクを落として茹でる。柔らかくなったら小口切りにカットする。

③ 豆腐はスプーンや包丁で食べやすい大きさに崩す。

④ ①に豆腐・もずく・オクラを加えて混ぜ盛り付ける。

⑤ 最後にすりごまを振りかける。


☆美味しく作るポイント
お好みで青しそやみょうがなどの薬味を加えると、さらに美味しくいただけます。


できるところから対策を

今回、減塩食を調理するためのアドバイスや試してみてほしいレシピをいくつかご紹介しました。

日常の介護食の準備において、食材のやわらかさや飲み込みやすさを配慮しながら、さらに塩分まで気をつけて献立を考えるのはなかなか難しいと感じられるかもしれません。

そこで、本記事で紹介したレシピや減塩のためのヒントを利用して、まずは手軽に試せることから始めてみてはいかがでしょうか。

健康にも優しく、美味しい食事を楽しんでいただければ幸いです。



▶︎ 日本人の食事摂取基準(2020年度版)


▶︎ 厚生労働省 平成30年「国民健康・栄養調査」

▶︎ 日本高血圧協会

監修者
丸亀 真依(Marugame Mai) 管理栄養士
大学卒業後、管理栄養士として名阪食品株式会社へ入社、特別養護老人ホームの厨房にて、調理業務・衛生管理業務の経験を積む。
その後、保育園・高齢者施設・障がい者福祉施設を担当し献立作成・衛生指導・食育活動に従事しました。
現在はそふまる工房にて、お客様に安心して美味しく食べていただける介護食をお届けするために、日々研究開発を行っております。