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【夏の注意点】高齢者向け介護食の食中毒対策とそふまるの衛生管理

健康的な和食


すでに5月も終盤。地域によっては25度以上の夏日も増え、夏の訪れが感じられますね。なすやゴーヤなどの夏野菜、桃やスイカなどの果物が旬を迎えるこの季節、食事が一段と楽しみになることでしょう。

しかし一方で、食中毒が起こりやすい季節でもあります。特に高齢者の食事を作る際には、細心の注意が必要です。

今回は、高齢者の介護食を作る際に注意すべき食中毒対策について、そふまるが長年の給食事業で培った経験からお伝えします。また、そふまるの商品を安心して楽しんでいただくための衛生管理や食材の処理方法についてもご紹介いたします。


夏の食中毒事情と原因

食中毒は、有害な微生物(細菌やウイルス)が原因で起こる健康被害のことで、食品や飲料を介して体内に入ると、腹痛、嘔吐、下痢、発熱などの症状が起こります。特に高温多湿な気候が続く夏季には細菌による食中毒が多く発生します。

以下に、夏に特に注意すべき食中毒の原因となる細菌をいくつかご紹介します。食中毒の原因は主に4つに分けられます。細菌、ウイルス、寄生虫、そして自然毒(例えば毒キノコ)です。特に細菌による食中毒は、梅雨から夏にかけての高温多湿な気候下で多く見られます。細菌の中には、人間や動物の体温くらいの温度で活発に増殖する種類が存在します。

また、湿度が高い環境を好むため、気温と湿度が共に高まる梅雨の季節は特に注意が必要です。食中毒を引き起こす細菌は、食材の見た目や味、匂いに大きな変化をもたらさないため、食べる前にその存在に気づくことは困難です。

この特性が食中毒のリスクを高めています。


食中毒の原因となる主な細菌
① カンピロバクター

生息場所:ほとんどの動物の腸管
感染経路:付着した肉を生で食べたり、加熱不十分な肉を食べることによる感染
症状:吐き気、腹痛、水のような下痢、発熱、筋肉痛、倦怠感など

② 黄色ブドウ球菌

生息場所:人や動物の皮膚や粘膜
感染経路:調理者の手からの感染
症状:対象の食品を食べてから約3時間後に急激な嘔吐、下痢など

③ 病原性大腸菌(O157)

生息場所:牛などの家畜の腸管
感染経路:付着した肉を生で食べたり、加熱不十分な肉(特に牛レバー)を食べることによる感染
症状:腹痛、水のような下痢、出血性の下痢

④ サルモネラ菌

生息場所:家畜の腸管や自然界に広く生息
感染経路:生肉、特に鶏肉と卵
症状:対象の食品を食べてから半日〜2日後に激しい胃腸炎、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、発熱など

⑤ ウェルシュ菌

生息場所:動物の腸管、土壌、下水
感染経路:煮込み料理、煮付けなど
症状:対象の食品を食べてから6〜18時間後に腹痛、下痢など

高齢者向け介護食の安全性:食中毒防止のための調理法と注意点


高齢者向けの介護食

食中毒の予防は、特に高齢者向けの介護食の調理において重要です。高齢者向けの食事は、飲み込みやすく、噛みやすいように工夫されているため、通常の食事を作るよりも調理工程が多くなります。これは食中毒を引き起こすリスクが高まる一因となります。

本記事では、私たちが高齢者施設での給食事業を通じて培ってきた知識と経験を基に、高齢者向けの食事を作る際の食中毒予防のための具体的な方法と注意点を紹介します。

菌の増殖を防ぐ調理法


高齢者施設での食事提供は大量調理となるため、温度の変化が緩慢になり、食中毒菌が発生しやすい温度帯が長く続く可能性があります。特に、室温と同じ温度帯は菌の増殖が活発になりやすいため、注意が必要です。

ここで重要なのは、下記の2点です。

① 加熱した料理を急速に冷却すること
② 調理後すぐに盛り付けること



特に、大きな鍋で大量に調理する料理(例:カレーやシチュー)では、ウェルシュ菌の発生が見られます。この菌は酸素がないところで増殖するため、調理後は混ぜて空気と触れさせることで、その発生を抑えることができます。


清潔な調理風景
二次汚染を防ぐ工夫


二次汚染とは、既に調理された食品が再度、菌に汚染されることを指します。

加熱前の肉や魚、土のついた野菜に菌が付着しており、これらが調理済みの食品に触れることで二次汚染が発生します。具体的には、生の魚や肉を切った包丁で野菜を切ったり、肉の汁を拭いた布巾で調理台を拭いたりする場合などが該当します。

二次汚染を防ぐための具体的な方法は以下の通りです。


① 野菜は徹底的に洗う
市販の野菜は一部洗浄されていますが、畑から採れたばかりの野菜には、土が付着している可能性があります。これには病原菌が含まれることがありますので、野菜は3回洗いを徹底することを推奨します。

② 調理器具を使い分ける
食材や調理工程によってまな板や包丁、布巾やスポンジを色分けし、使い分けることが重要です。これにより、生肉や生魚から野菜への汚染を防ぎます。


食材の保存方法


保存方法で食中毒を防ぐためには、以下の3つが重要なポイントです。保存時の温度や湿度、保存期間などを適切に管理することで、食中毒を引き起こす菌の増殖を抑えることができます。

① 保存温度を適切に管理する
② 湿度を適切に管理する
③ 保存期間を適切に管理する


それぞれ詳しく見てみましょう。

① 保存温度を適切に管理する

冷蔵庫の温度は、一般的に5℃以下が理想的です。
これは、食中毒を引き起こす菌が増殖しにくい温度帯だからです。また、冷凍庫の温度は-18℃以下が適切です。

② 湿度を適切に管理する

冷蔵庫の湿度も食材の保存状態に影響を及ぼします。湿度が高すぎると、食材が腐りやすくなります。
一方、湿度が低すぎると、食材が乾燥しやすくなります。湿度管理が難しい場合は、野菜や果物はプラスチック袋に入れてから冷蔵庫に保存すると、湿度を保つことができます。

③ 保存期間を適切に管理する

賞味期限や消費期限は、食品の品質が保証される期間を示しています。
ただし、開封後の保存期間は、未開封時の期間よりも短くなる場合があります。開封後は、なるべく早く食べ切るようにしましょう。また、手作りの料理については、原則として調理後2-3日以内に食べ切ることが推奨されています。

高齢者は、若い人よりも免疫機能が低下し、持病を抱えている方も多いため、少量の菌でも食中毒を引き起こしやすい傾向にあります。
脱水症状により病状が重篤化する可能性もあるため、十分な注意が必要です。

高齢者向けの安全な食事調理について、これらのポイントを念頭に置きながら、常に注意深く調理することが重要です。

そふまるの安全性について

衛生環境の良い工場

私たちが提供する高齢者向けの食事について、食材の安全性と食中毒予防の取り組みをお伝えします。「食中毒を予防するための3原則」を守ることが、食品の安全性を確保する基本です。

食中毒予防3原則とは?


食中毒予防の3原則とは次の3つです。

① 細菌をつけない(清潔・洗浄)
② 細菌を増やさない(迅速)
③ 細菌をやっつける(加熱・冷却)


これらについて詳しく見ていきましょう。


① 細菌をつけない(清潔・洗浄)

食中毒を引き起こす細菌は、魚、肉、野菜などの食材に存在することがあります。これらの細菌が手や調理器具を介して他の食材を汚染すると、食中毒の原因となります。

そのため、食材を取り扱う前後に、手のひら、手の甲、指、爪、手首まで石鹸で泡立てて洗い、流水でよく洗い流すことが重要です。また、使用する調理器具も洗浄・消毒することが必要です。特に、生肉や生魚、卵用の器具と野菜用の器具は分けることが推奨されます。

② 細菌を増やさない(迅速)

細菌は適した温度、水分、栄養が揃うと急速に増殖します。食材に付着した菌は時間が経つと増えるため、調理は迅速に行い、調理後は早めに食事をすることが理想的です。さらに、細菌は通常、10℃以下では増殖が遅くなるため、調理後は室温に放置せず、冷蔵庫又は冷凍庫で保存することが必要です。

③ 細菌をやっつける(加熱・殺菌・冷却)

一般的に、食中毒を引き起こす細菌は熱に弱いため、食材に付着した細菌も適切に加熱すれば死滅させることが可能です。具体的には、食材の中心部が75℃以上を1分以上保つように加熱することが推奨されます。このように、十分に加熱調理すれば、ほとんどの食中毒は防ぐことができます。食材の中心部までしっかりと火を通すように心掛けましょう。

さらに、調理器具は洗浄した後、熱湯や塩素剤などを使用して消毒することで、食中毒予防の効果が高まります。

そふまる工房の衛生管理

そふまる工房では、安全な食品を作るために、工場内の衛生管理・従業員教育・工程管理を行っております。工場内を清潔に保つ基本は、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)+2S(洗浄・殺菌)の徹底です。

必要なものと不要なものを区別し、不要なものはしっかりと撤去することで、常に清潔な状態に保つように努めています。不要な物が長期間放置されていると、その場所の清掃が行き届かず、害虫などの潜伏場所にもなり得ます。

また、工場内の整頓を行うことで、物の出し入れが素早くなり、作業効率が向上します。これらを踏まえ、清掃作業のルール化や点検を定期的に行うことで、清潔感を維持しています。

従業員への衛生教育


工場内を清潔に保つだけでは十分ではありません。従業員が外部から異物や細菌を持ち込んでしまうと、それが原因で食品の廃棄につながる可能性があります。そのため、日頃から従業員への衛生教育を重視しています。

具体的には、手洗いやマスクの着用、作業着の正しい着用方法などを周知し、徹底しています。さらに、毛髪やまつげなどの細かい部分についても、作業前にチェックシートを用いて確認しています。

そふまる工房のHACCP式衛生管理

ハサップ

食品の安全性は、その製造過程での衛生管理が重要です。そふまる工房では、HACCP(ハサップ)方式に基づいた衛生管理を行っており、食品の安全性を確保しています。

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)は、食品製造の全工程で危害要因を予測し、特に重要な工程を連続的・継続的に監視し記録することで食品の安全性を確保する衛生管理手法です。

そふまる工房では、令和4年3月に「ならHACCP(ハサップ)」を取得し、原材料の受け入れから加工・出荷までの各工程でHACCP方式を適用しています。特に、加熱と金属探知機の2つの工程では、管理基準(安全が担保できる範囲)を設定し、継続的に監視・モニタリングを行っています。

このような厳格な衛生管理により、食中毒や異物混入などの危害を未然に防ぎ、食品の安全性を確保しています。また、HACCP方式で衛生管理の水準を高く保つことで、お客様に安心と安全な商品を提供しています。

介護食を活用しよう


これまでに、夏に注意するべき食中毒の種類、高齢者向けの食事作りの注意点、そしてそふまる工房のHACCP式衛生管理についてご説明しました。

高齢者の方々は、免疫力や消化機能が低下しているため、食中毒に対する注意が特に必要です。食中毒予防の3原則を守り、適切な調理をすることで、食中毒のリスクを減らしましょう。

そふまる工房の商品は、冷凍食品が中心であり、調理工程が少なく、食中毒のリスクを抑えることができます。これからの季節、手作りする時間がない、または暑い中での調理が心配な日は、ぜひそふまる工房の安心安全な介護食をお試しください。

梅雨と夏を迎え、食材が美味しくなる季節になります。しかし、食材の取り扱いや調理には注意が必要です。特に食中毒には十分注意して、おいしいものを食べて、元気に夏を乗り切ってくださいね。

▼厚生労働省 細菌による食中毒
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/saikin.html/

▼奈良県HACCP自主衛生管理認証制度(ならハサップ)
https://www.pref.nara.jp/45879.html/

監修者
丸亀 真依(Marugame Mai)  管理栄養士
大学卒業後、管理栄養士として名阪食品株式会社へ入社、
特別養護老人ホームの厨房にて、調理業務・衛生管理業務の経験を積む。
その後、保育園・高齢者施設・障がい者福祉施設を担当し
献立作成・衛生指導・食育活動に従事しました。
現在はそふまる工房にて、お客様に安心して美味しく食べていただける介護食をお届けするために、日々研究開発を行っております。